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さらに最近では、企業には「利益の追求」だけでなく、環境・安全・人権をはじめ様々な社会的な責任を果たしていくべきであるという考え方が広まりつつあります。 これをCSRと呼んでいます。
具体的には、環境対策の強化や障害者雇用制度の拡大、社会貢献活動の充実、男女同等の雇用待遇の実現のほか、CSR専門の部署を設立して、「CSR報告書」の形で経営情報を積極的に開示していく取り組みなどが見られます。 コーポレートガバナンスやCSRへの取り組みは、企業にとって直接的な利益には結びつきませんが、中長期的な成長を大きく左右するものです。
これらをどこまで徹底できるかが問われているのです。 企業の規模が大きくなり、組織も複雑化していくと、一部の部門でこのような不祥事が起こっていても、それをチェックするしくみが働かず、その状態が長く放置されてしまう恐れがあります。

そして、ひとたび問題が発覚すれば、企業の社会的信頼は大きく失われ、場合によっては企業の存続まで危うくなることもあります。 そこで、こうした企業の不正を防ぎ、経営が適切に行われるように監視するしくみの重要性が、あらためて見直されています。
このような経営監視のしくみを「コーポレートガバナンス」(企業統治)と呼んでいます。 最近の日本の産業界では、会社経営をチェックする役割を果たす取締役という役職を、あえて社外の人材から招いて、より厳しく監視してもらうという「社外取締役制度」を導入している企業が増えています。
これも同じねらいです。 1980年2月、新興IT企業であるL社が、N放送の経営権取得をねらって同社の株式を大量取得していたことが明らかになりました。
この株式取得は、N放送のグループ会社であるフジテレビの経営権にも大きな影響を与えるものであり、新興企業による巨大メディア企業に対する買収計画として、注目を集めました。 そしてこの頃から、日本の産業界でも「会社とは誰のものなのか」があらためて問われるようになり、株式会社にとっての株主の役割が見直されるきっかけになりました。
会社の持ち主は、理論的には出資者である「株主」ということになります。 さらに広義には、会会社はいったい誰のものなのか社の経営陣やそこで働く社員、その会社の製品・サービスの消費者、その会社が活動している地域社会など、利害関係のある人(ステークホルダー)すべてのものであるとも捉えられます。
株式持ち合いのメリットとデメリットしかし日本では一般的に、会社は「経営陣」や「社員」のものであるという意識が強く、米国などに比べると株主の存在はあまり重視されない傾向がありました。 この背景には、産業界の「株式持ち合い」があります。
これは、企業同士が互いに株式を保有しあって親密な関係を築くという、日本独特の企業慣習です。 株式会社の持ち主は、原則として出資者である「株主」。
しかし、日本ではこれまで会社は「経営陣」や「社員」のものという意識が強かった。 こうした状況を変化させたのが、バブル崩壊後の長期的な株価の低迷でした。
株価が下がると企業の財務状態が圧迫されるため、持ち株を売却して株式持ち合いを解消しようとする動きが広がったのです。 この結果、企業が株主となるケースが減り、かわって増えたのが外国人株主や個人株主でした。
これらの株主は、自分たちの利益に非常に敏感です。 よい経営をして利益を上げているか、それを適切に株主に配分しているか、などにしっかりと目を向け、株主にとっての魅力が乏しいと判断したら、持っている株式を売却して、その企業から離れていきます。

また、経営に強く意見を主張する「物言う株主」も数多くいます。 そのような中で、日本企業はこれまでの経営のあり方をあらため、株主重視の経営を取り入れるようになりました。
日本の産業界では株主、とくに外国人株主の声が強まることを警戒する企業は少なくないようです。 しかし、株主が経営陣に対して強く意見するようになると、結果的に経営陣も経営改革や事業再編に積極的に取り組むようになり、経営力が高まりやすいという面もあります。
株主構造が大きく変化する中で、日本の企業経営も徐々に変化しつつあるのです。 知らぬ企業に突然株式を買い占められ、会社を乗っ取られてしまう事態を防げます(敵対的買収)。
また、株式を持ち合っている企業同士は、互いの経営にはあまり口出ししないのが一般的で、そのおかげで経営陣は株主の声をさほど気にせず経営に専念できるメリットもありました。 しかしそのために、会社の持ち主であるはずの株主を最優先する経営というものは定着していませんでした。
また株主は本来、経営陣による経営のあり方を監視する役割があるはずですが、この点も十分には機能していませんでした。 そんな中で日本企業は、引き続き成長を維持し、厳しい国際競争に勝ち残っていくだけの収益力・競争力を確保していかなくてはならないのです。
「総合企業」では生き残れない時代になった経営改革のキーワードとなるのが「選択と集中」です。 90年代以降、日本の産業界は大手企業を中心に、事業の多角化を積極的に進めてきました。
その結果、一つの会社で多数の事業分野をかかえる「総合企業」が目立つようになっています。 複数の事業をかかえていれば、ある分野の業績が低調でも、他の好調な分野がその分を補って、全体として安定した収益を維持できました。
1980年以降の世界的な不況の中で、日本企業の経営環境は急速に悪化しています。 上場企業の決算業績を見ると、経常利益は80年3月時点までは6年連続で増益でしたが、的年3月の決算では前年比約帥%マイナスと、大きな減益になる見込みです。

輸出産業の業績悪化が顕著で、とくに景気の牽引役だった自動車産業の苦戦が目立ちます。 最近では、テレビ事業から撤退を表明した例などがこれにあたります。
同社は家庭用プラズマテレビを世界で初めて発売するなど、世界のテレビ事業の先端を走ってきただけに、この事業撤退は大きな話題となりました。 これほど大胆な事業の選別をしていかなくては、厳しい国際競争の中では生き残れなくなっているということです。
このほか「選択と集中」の事例としては、東芝が次世代DVD事業から撤退する一方で、原子力発電事業などに注力したり、Sが「液晶事業」に次ぐ有力事業である「太陽電池事業」を大幅に強化している例などが挙げられます。 「選択と集中」と呼ばれる事業再編の必要性は以前から叫ばれていましたが、まだまだ改革は不十分であるとの指摘もありました。
しかし「百年に一度」と呼ばれるほどの世界的な不況をきっかけに、今後は大胆な改革がますます進んでいくと見られています。 やがて経済が成熟化するにつれて、この「総合型」の事業構造がかえってマイナスに働くようになります。
たとえ成長性の高い事業を持っていても、ほかにも色々な事業をかかえていると、人材や資金をそこだけに投入するわけにはいきません。 これでは、せっかくの有力事業を十分に伸ばすことができません。

企業間競争が激化する中で、複数の事業をかかえていることが、かえって不利になってきたわけです。

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